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イメージと現実とのギャップをきちんと見ること 『「お手本の国」のウソ』

      2017/09/16

「お手本の国」のウソ (新潮新書)隣の芝生は青く見えるものだ。しかし、それが自嘲にまで至れば、大切なものまで失ってしまう。

教育、政治、司法などそれぞれの分野でお手本としてもてはやされている他国の制度や手法。ありがたがっているけれどホントのところどうなのよ、という内情をとてもわかりやすく紹介してくれているのが『「お手本の国」のウソ/田口理穂ほか/新潮新書』。タイトルはさておき、中身は絶品。

本書で取り上げられているのは、次の7つの事例(最後のギリシアについては「お手本にしたくない国」のウソ)。

  • 「少子化対策」という蜃気楼――フランス
  • “世界の教育大国”に「フィンランドメソッド」はありません――フィンランド
  • 「第三極」にふり回された二大政党制お家元――イギリス
  • 私なら絶対に選ばない陪審員裁判――アメリカ
  • 自然保護大国の「破壊と破滅」の過去――ニュージーランド
  • 「ヒトラー展」に27万人、ドイツ人と戦争責任――ドイツ
  • 財政破綻、それでも食べていける観光立国――ギリシャ

まず、どれも時局にあった大きくて重たい項目で、センスの良さがうかがえる。各項目は、それぞれの国に長期間暮らしている方々7名が書かれていて、驚くほど粒ぞろい。洞察のレベルが高く、ニュートラルな意見との印象を受けた。事の真相は読んでいただいた方が良いだろう。わかりやすく読みやすく、コンパクトにまとめられてる。僕には知らないことだらけで、とても貴重な情報だった。中でも、二大政党制と陪審員制度については、日本でも似たような制度を導入してしまったわけで、「あー、やっちまったなー」というのが率直な感想だ。

全体を通して本書が伝えたいことは、他国のうわべだけを見て、なんか良さそうってだけで短絡的に飛びついたって駄目だよということ。それぞれの制度・手法の背景には歴史が、そして頑とした覚悟があるのです。それらがなくて、今見えているやり方だけを真似しようったって、甘いんじゃない、ってことです。言われてみればあたり前のことだけれど、豊富な事例を具体的に示してくれる本書はそれを充分に伝えている。

本書を絶品と推すにはもう一つ理由がある。7名の筆者(中島さおり、靴家さちこ、伊藤雅雄、伊万里穂子、内田泉、田口理穂、有馬めぐむ)いずれも、その筆致が実に真摯なのだ。各自の経験や考えを深く掘り下げ、カッチリと書かれている。日本も他国も貶めることがない。だから読んでいて気持ち良い。

タイトルから受ける印象をいい意味で裏切ってくれる、読んで良かったなあとしみじみ思えた一冊。

 

「お手本の国」のウソ (新潮新書)
田口 理穂ほか
新潮社
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