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『楽園のカンヴァス』はルソーの夢を見させてくれる

      2017/09/16

楽園のカンヴァス / 原田マハ / 新潮社
楽園のカンヴァス

アート・ミステリの快作と好評の『楽園のカンヴァス』。なるほどミステリアスな展開にグイグイ引き込まれる一方で、そこに描かれているのは芸術家の情熱であり、ロマンチックな恋愛でありました。胸にじんわり沁み入ってくる物語。素敵。

謎の老美術コレクターが所有するルソーの大作「夢をみた」。その真贋判定を競うこととなった気鋭のルソー研究家の男と女。そこに大美術館のキュレーターやら美術品バイヤーやら、果てはインターポールまで絡んでくるわ、さらに絵に隠された驚愕の秘密が浮上してくるわ。否が応でも盛り上がります。お定まりと言ってしまっては素気無い、ツボを押さえたと表現しましょう。そんなミステリという形式がエンタテイメントを成り立たせているわけですが、その枠組みの中に込められている愛おしい物語に魅了されるのです。

冒頭で述べたように、一つは芸術家の情熱。一枚の絵に込められた画家たちの情熱がこれでもかと濃密に描かれているんですね。命をかけて絵に向かい合ってるというか。もちろんフィクション、でもそんなことどうでもよくなってしまうくらい熱ーいものが伝わってくる。本来は、絵を観ることで受け取るものなのでしょうが、作者が媒介してその情熱を言葉でつづってくれているのです。名画と呼ばれるものの向こう側にはすべからくこんな物語が秘められているのだろうと改めて思いめぐらすと、ちょっと恐ろしいような気もします。絵画を味わうってのはこういうことなんだろうな。

そしてもう一つはロマンス。作中作に登場するルソーが、近所に住む若妻ヤドヴィガによせる恋心のなんと健気なことか。ルソー、むちゃくちゃ可愛いじゃないですか。そしてティムの揺れる心、さらには……。女性から見たいい男を描くとこうなるのかあ、などと感心しつつ、それでも不器用な男達それぞれの愛の表現にジーンときちゃいます。

こんなに可愛くてかっこいいルソーの夢を見させてくれてありがとう。もっと早く読めば良かったよう。

 - 小説, 読書