第3弾ますます快調 『特捜部Q ―Pからのメッセージ―』
2017/09/16
特捜部Q ―Pからのメッセージ― / ユッシ・エーズラ・オールスン(吉田薫、福原美穂子 訳) / ハヤカワミステリ
『檻の中の女』『キジ殺し』に続く北欧警察ミステリシリーズの3作目。堪能した。デンマーク産というマイナーイメージもあって、最初は「ほんまに面白いんかいな」くらいのノリで手にしたわけだが、いやもう離れられないシリーズになった。
「特捜部Q」――未解決事件を専門に扱うコペンハーゲン警察の新部署である。今回「Q」のカール・マーク警部補と奇人アサドのコンビが挑むのは、海辺に流れ着いたボトルメールの謎。瓶から取り出された手紙の冒頭には「助けて」との悲痛な叫びが。書き手の名前の頭文字はP。しかし、手紙の損傷は激しく、内容の完全な買得は難航した。Pはどうやら誘拐されたようなのだが、過去の記録に該当する事件は見当たらず……。
―ハヤカワオンライン
今回もカールとアサドが追うのは凄惨な事件だ。子供の誘拐だから、これまでに増して性質が悪い。でも不快に陥ることなくむしろワクワクして一気に読めるのは、エンタテイメント要素がてんこ盛りされているから(ちなみに本作、シリーズで最長の576ページ)。
犯人サイドの展開はサイコミステリ。一方警察側はギャグを散りばめて描かれる。アクションはあるし、カールやアサドの振舞にはほんのりハードボイルドの風味が添えられている。カール、アサドはもちろん、それを取り巻くキャラクタもすっごく魅力的。なんでもありなのだ。
構成も素敵。異常な犯行を繰り返す犯人の物語を読んでげんなりしてきたら、パッと場面がスイッチして、カールたちのほのぼの感に救われる。これの繰り返し。そのタイミングが絶妙なんだわ。巧い!伏線も見事で、p269の記述なんて会心の出来じゃないかな。
3作目にしてシリーズを流れるサイドストーリーもちびりちびりと進んできた。カールを絶望に陥れた事件の真相は、アサドはいったい何者なのか、などなど。進展が小出し小出しでイライラさせられるが、それも作者の戦術だからやむをえない。まんまと術中にはまって、次作が楽しみでならない。
ま、なんやかんや言いましたがこのシリーズ、アサド、君でもってるよ。