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『黒笑小説』はちと残念かな

      2017/09/16

黒笑小説 / 東野圭吾 / 集英社文庫
黒笑小説 (集英社文庫)

以前にも書いたことなのだけど、東野圭吾作品の中で『怪笑小説』『毒笑小説』は大のお気に入りなのである(あと天下一大五郎シリーズも)。読んだのはむかーし昔なのに、「鬱積電車」「逆転同窓会」なんかは今だにフッと思いだして笑っちゃうくらいなのだ。これらの面白さは、乱暴に言ってしまえば、常識を取っ払うというか、思ってても言っちゃいけないことしちゃいけないことをやっちゃうところにある。もちろんそんなひっちゃかな光景を鮮やかに描く腕前はもちろんのこと。

その続編『黒笑小説』をようやく手にした。単行本が出たのは2005年(文庫版は2008年)にもかかわらずこれまで放っておいたのには訳があって、怪笑・毒笑が充分すぎるほど面白かったので、これらで満腹だったのが一つ。もう一つは、これら以上のものが出てくるとも思えなかったから。そして今になって読む気になったのは、実は『歪笑小説』を先に読んだところ、怪笑・毒笑とかなり雰囲気が変わっていたので間を埋める黒笑の存在が急に気になりだしたから。

本書には13編が収められている。前半の「もうひとつの助走」「線香花火」「過去の人」「選考会」は灸えい社を舞台とした出版会物で、これらが歪笑小説へと引き継がれていったことが判明。これで目的のほとんどが達成できた。

そしてその後を読み進めていくと…、うーん、怪笑・毒笑ほどのパワーはなかった。前作、前々作があまりにも上出来だっただけに物足りない。ドタバタに無理矢理やり感がありすぎるんだんなあ。残念ながら先の予感は的中してしまったのである。それだけ怪笑・毒笑が入魂の作で、黒笑はなんとかその続きをという苦労があったんだろうな。さすがの東野圭吾といえどもこういうことはあるわな。

で、4冊目となる歪笑ではうれしいことにちょっとパワー回復することを付け加えておこう。

 - 小説, 読書