『テルマエ・ロマエ V』はもったいない
2017/09/16
テルマエ・ロマエ V / ヤマザキマリ / BEAM COMICS
読み進めるうちに、なんだか寂しくなってきた。もったいないのである。あのテルマエ・ロマエ魅力が失われてしまったようで。とても残念。
I〜III巻は面白かった。古代ローマの技師ルシウスが現代日本の銭湯へとタイムスリップるという荒唐無稽な設定。そして彼の目を通して風呂文化を見つめ直す、はたまたローマ文化にも触れるという視点。さらにはローマを救わんと立ち上がるルシウスの壮大な情熱。斬新な発想にたまげさせてもらった。すごいコミックが登場したものだと思った。そんなことを褒めちぎったこともある。それなのに……。
前巻から嫌な予兆はあったが、今回確実なものになってしまった。恋愛話と旅館買収話とを絡めた、なんとも下世話なストーリーが延々と展開されることになったのだ。ローマを救うのも潰れかけた旅館を救うのも志は同じだ、なんて話じゃない。口に入れるとうれしくなるようなうまいもんを出してくれていた腕に自慢の大将の居酒屋が、いつの間にかチェーン店に変わってしまっていたって感じでしょうか。こんなストーリー、わざわざテルマエ・ロマエの舞台を使わなくてもいいだろうに。ぼくが勝手に作りあげたイメージを壊されたと言って非難するのも失礼かとは思うのだが、言いたいことは言いたい。テルマエ・ロマエはこんなはずじゃなかったと。
まさか映画化とかが影響してるんじゃないだろうなあ。そこまで穿った見方はしたくはないのだがなあ。