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『The 500』はとてもやんちゃ

      2017/09/16

The 500 (ザ・ファイヴ・ハンドレッド) / マシュー・クワーク(田村義進 訳) / ハヤカワ・ミステリ
The 500 (ザ・ファイヴ・ハンドレッド) 〔ハヤカワ・ミステリ1861〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

アメリカの政策決定に大きな影響力をおよぼすロビイスト。もちろん本来は正々堂々真っ当な活動をするわけだが、身を隠して暗躍する輩もいるらしい。表向きはコンサルティング会社の看板を掲げつつ、その実体はあくどい手口で政策をころがし大金を稼ぐえげつない連中だ。『The 500/マシュー・クワーク(田村義進 訳)/ハヤカワ・ミステリ』はそんな裏ロビイスト界を舞台にした疾走感溢れるサスペンス。

貧乏で子供のころから悪さに手を染めながらも、今の環境を抜け出したいとなぜかハーバードを卒業したマイクが主人公。そんな彼を、ワシントンDCで隆盛をふるうロビイスト企業の社長がうちに来ないかとスカウトする。やり手の社長は根っからの悪党だけあってマイクの匂いがわかるんだな。おぼっちゃまエリートなんかよりよっぽど役に立つって。社長の読みどおり、マイクはずば抜けた才能を発揮し、トントン拍子に出世、何不自由ない豪奢な暮らしを手に入れる。ところがだ、夢がかなったとなると、一方でそれを壊したくなる衝動がムクムクと頭をもたげてくる。そしてマイクは、とんでもない方向に突っ走りだすのだ。

安定を嫌うというかリスクを好むというか、そういう性質って多かれ少なかれ誰にでもあるんだろうな。それが少々極端なマイクの活躍を追うことで、なんかスカッとするところがこの作品の本質だろう。

それに加えてキャラクターが素敵。マイクは滅法やんちゃである。そのやんちゃぶりがたまらなく愛おしくなるのである。謎めいた恋人アニーも、これはこれで愛くるしいイイ女。そして真打はマイクのおやじさんだ。いやー、カッコイイったらありゃしない。読後いい気分になれるのは魅力あふれるこのおやじさんのお陰だ。

それにしても最近のハヤカワミステリは安定感があるねえ。全部を読破しているわけじゃないけれど、手に取ったものにはずれはない。この『The 500』も大当たり。

 - 小説, 読書