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オタクを理解するための好著 [動物化するポストモダン]

      2017/09/16

動物化するポストモダン―オタクから見た日本社会『ゲーム的リアリズムの誕生』を先に読んだのだが、出版順にならってこちら、『動物化するポストモダン―オタクから見た日本社会/東浩紀/講談社新書』から紹介。
本書は「オタク文化」を丹念に評論した著作で、オタクの内実を知らない小生にとっては極めて理解しやすく納得させられる1冊である。今や到底無視し得ないサブカルチャとなったオタクを、特にオタクでない人が理解する上で格好の好著、名著ではなかろうか。
東氏は、オタク文化をポストモダンの1形態と位置づけ、その特徴を以下の2点として結論している。

  1. ポストモダンではオリジナルとコピーとの区別が消滅し、シミュラークル(二次創作がそれにあたる)が増加する。このシミュラークルは特定の作家などが作り出すものではなく、要素に分割されたデータベースから発生してくる。
  2. 近代では人間性を「神」や「社会」(大きな物語)が保証することになっていたが、ポストモダンでは大きな物語が失調し、「神」や「社会」もジャンクなサブカルチャから捏造される。そのような世界では、主体はシミュラークルの水準における「小さな物語への欲求」とデータベースの水準における「大きな非物語への欲望」とに二層化される。その際人間性は、前者の立場からは即物的な動物化し、後者の立場からは擬似的で形骸化した人間性となる。

氏が導き出した以上二つの結論は、今の社会を適切に分析していると思える。
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