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人間原理がわかる『宇宙はなぜこのような宇宙なのか』『宇宙は無数にあるのか』

      2017/09/16

宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論 / 青木薫 / 講談社現代新書
宇宙は無数にあるのか / 佐藤勝彦 / 集英社新書
宇宙はなぜこのような宇宙なのか――人間原理と宇宙論 (講談社現代新書)宇宙は無数にあるのか (集英社新書)

宇宙論の入門書や解説書を読んでいると、「人間原理」ってのが最後の方で必ずそしてちらっと顔を出す。「この宇宙は人間が誕生するのに適したように創られている」というあれである。受け取りようによっては「神がこの宇宙を創った」みたいに聞こえるから、胡散臭さプンプンなのである。何でも神が創ったと思う人たちがそんなことを唱えるならわからないでもない。ところが不思議なのは、物理を探求する科学者たちがそれをとても気にしていて、賛否を議論していること。どうやらくだらん話では片付けられないもののようである。いったい人間原理とは何なのか。

そんな人間原理にまとわりついたモヤモヤを一気に晴らしてくれる新書が2冊、ほぼ同じタイミングで出た。『宇宙はなぜこのような宇宙なのか』と『宇宙は無数にあるのか』。それぞれ1冊ずつでもすごいのに、それがまとまってかかってきたのだから、これはもう人間原理解説本最強タッグなのである。

まずは『宇宙はなぜこのような宇宙なのか』から。発行順では逆になるが、この順序は大事。面白科学本の翻訳を数々手がけている青木薫女史が、物理学者の話題である人間原理を世界一わかりやすく、素人のレベルまで降ろしてきてくれた労作。人間原理のことがこんなにスルッとわかってよいのかと驚く。まいりました。今年のベストです。

本書では、1974年に発表されたブランドン・カーターの人間原理が中心に扱われている。その説明を読んではじめて知ったのは、人間原理はインテリジェントデザインなどとはまったく違うもので、そこには神なんて登場しないのだということ。この宇宙が人間の誕生に適しているのはたまたま(観測選択効果)であって、宇宙が多数、あわよくば無数に、あるなら、人間の誕生に適した宇宙があってもよかろう、ということ。ユニバースでならぬマルチバース。そんなことあるのかというと、インフレーション・モデルからは多宇宙ヴィジョンが自然に出てくるそうな。

人間原理の言わんとしているところがわかったところで、次は『宇宙は無数にあるのか』。『宇宙はなぜこのような宇宙なのか』が大まかなスケッチ、そし本書でさらにディテールを、というステップになる。インフレーション理論提唱者ご本人の著とあって、物理学者にとっての人間原理解説。

ここで佐藤先生は人間原理に否定的な立場をとっている。人間原理を受け入れるかどうかは、神(創造主)を信じるかどうかなんて話ではまったくなくて、マルチバースを認めることでそれでよしとするか、いやそんな安易な態度は許さないとするか、なのである。

宇宙論の中での人間原理の意味を知るには恰好の2冊だった。人間は宇宙をどこまで解き明かすことができるのか、畏怖を感じるな。

 - 自然科学・応用科学, 読書