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ブロガーへの忠告 『自由をつくる自在に生きる』

      2017/09/16

本を読むときの行動は人それぞれ。傍線派、それも3色派、書き込み派、ドッグイア派、何もしない派、いろいろなタイプの方がいる。どんな読み方をしようと自由だ。でも、線を引いたり書き込んだりしたいんだけど、本は汚してはいけないものとの思い込みでできないのならば、それは何らかの支配を受けていることになる。

私は気に入った個所に黄色のダーマトグラフで線を引くことが多い。『考える技術・書く技術』の影響だ。『自由をつくる自在に生きる/森博嗣/集英社新書』をそうやって読んでいったら真っ黄色になってしまった。黄色の意味ないじゃん。言い換えればそれだけ密度が高いということ。

本書は、自由を得るために(金を稼ぐために)ミステリを書き続けたことなど、これまでにも森氏がいろんなところに書いてきたことの集大成だろう。「自由」を森流に噛み砕き、自由とは何か、さらには自由を手に入れるにはどうすればよいかの講義だ。わかりやすくてとてもいい本。そして同時に怖い本だ。

自由になるためには不自由を感じなければならない。自分の置かれている状況を俯瞰し、よく考えること。自由を奪う支配が多く見つかるはずだ。常識、空気、流行、マスコミなどなど、そして自分。そしてその支配を乗り越えなければならない(支配から逃れるのではない)。だから物凄くエネルギーが要る。

そんな森氏の考えに概ね(いや全面的に)納得する。手枷足枷がいかに多く存在するかには気づいていた。ただそれらを解き放つためのための行動は、私の場合、あまりにも不充分だった。少しは自由が増えたと自覚しているが、一方で増えた不自由もある。気力が足りなくて受け入れている不自由もある。それが現状。残された人生、少しでも自由をつくり、自在に生きたいと思う。

上で「怖い本」と書いた。怖いのは、森氏が懇切丁寧に考えてくれてしまうこと。本来自分で考えるべきことを考えてくれるので、わかったような気になってそこでストップするのが怖い。自由を獲得するのは自分自身の考えであり、それを具体化する行動なのだ。改めて肝に銘じる。本書はその入口、取っ掛かりだ。それもすばらしく良くできた。

ところで、森博嗣の以前の著作にはもっと棘があったように思うのだが。少々まろやかになられたのではないか。

【おまけ】ブロガーへの忠告

ハッとするブロガーへの忠告を引用しておこう。もし心当たりがの方がいらっしゃったらご参考に。

 本来、自分の時間は自分のためにある。何をするかは自由なはずだ。
しかし、ブログを書くことが日常になると、ついブログに書けることを生活の中に探してしまう。人が驚くようなものを探している。写真に撮って人に見せられるものを見つけようとしている。たとえば、1年かけてじっくりと考えるようなもの、10年かけなければ作れないようなもの、そういった大問題や大作ではなく、今日1日で成果が現れるような手近な行為を選択するようになるのだ。
知らず知らず、ブログに書きやすい毎日を過ごすことになる。
これは、「支配」以外のなにものでもない。人の目を気にし、日々のレポートに追われるあまり、自分の可能性を小さくする危険がある。充分に気をつけた方が良いだろう。

自由をつくる自在に生きる/森博嗣/集英社新書
自由をつくる自在に生きる (集英社新書 520C)

 - 人文, 読書