大切なのは尊敬と尊厳 『How Starbucks Saved My Life』
『How Starbucks Saved My Life』がなかなかよかった。
本書の中に、
I think it is true that the older you get, the more you cry. That's certainly true for me.
なんて一文があって、これがもうその通りで、読みながら何度もうるうるしてしまった。年を取るとこんな話が身につまされて、目頭が熱くなるのよね。
で、どんな話かというと、おじさん(おじいさん?)の再生の物語である。
著者のMichael Gates Gillは裕福な家庭で育ち、名門イェール大学卒業後、世界No.1の広告代理店J. Walter Thompson'sに入る。家庭を顧みず、仕事命で働き、昇進重ねて重役にまでなる超エリート、だった。ところがある日突然解雇され、家族にも逃げられ、路頭に迷いかけているところをスターバックスの店長から声をかけられ、バリスタとして働くことになる。そのとき64歳。
日本で例えてみれば、小学校から大学までずっと慶応、電通入ってガンガン出世した取締役が、リストラされて吉野家でバイトしてる、みたいな。
Mikeは店長やパートナーさんたちに支えられて、新たな生きる価値観を少しずつ見出していくわけだが、その一つひとつがじんとくるわけよ。キーワードはrespectとdignityかな。同僚はもちろんお客様にも尊敬を忘れないこと、すべての仕事――トイレ掃除であれレジ打ちであれ――に対して尊厳を持つこと、これがよりよく生きるための基本なのだ。
大企業重役のエリートがそんなことをわかっていなくて、スタバの店員になって初めてわかるってのがなんともふるっている。まあぼくだって、よくわかっちゃいないんだけどね。
全編通じてベタと言ってしまえばそれまでだけど、この手の話はそれでよい、それがよいのである。
さて、感想は以上のようなところで、あとは『How Starbucks Saved My Life』を読んだ状況を、英語学習の観点から記しておこう。
今年3月に立ち上げた「TEDで笑えるようになる」プロジェクト。そのトレーニングの一つとして読書を採用し、『Homo Deus』に続いてこれが2冊目。さほど難しくはなくて、楽しく読み通せた。たくさん登場する会話表現を調べるのには手間取った。
総語数66555、読むのに要した日数25日、読むのに要した時間29時間。1日あたりに読んだ語数2662、読んだスピードは38語/分。