科学解説書はもっと読まれるべきだ 『ガリレオの指』
2022/04/17
本の紹介でのっけからこんなことを言っては実も蓋もないのだが、最後まで目を通したものの難しくてちゃんとは読めなかった。侮ってしまったその本は、『ガリレオの指―現代科学を動かす10大理論/ピーター・アトキンス/早川書房』だ。
全10章からなる大著は、自然科学の世界にパラダイム変換をもたらした理論、すなわち「進化論」「遺伝子」「エネルギ」「エントロピ」「相対性理論」「量子論」などを解説している。理論が登場するまでの歴史と現状そして今後の展望と、それらの解説はとても丁寧だし、読み物としては読みやすい。とは言え各章の核心にせまるにつれて、そして全体の後半に進むにつれてその内容はとても難解で、到底理解が追いつかなくなってくる。
ただし、理解できないから無意味かと言えば、ぜんぜんそんなことはない。少なくとも、過去の科学者がどう考え、その考えの矛盾をどのように解決しようとしたかは読み取れるし、今現在、科学者たちは何を目指しているのかは伝わってくる。ひとことで言えば「万物を統一的に記述できる理論の構築」である。本書の終わりに、科学の未解決な問題のうち最も重要なものとしては、宇宙の起源と人間の意識の二つが挙げられている。これは私の感覚とピッタシなのでうれしくなった。「宇宙って何」「脳って何」を特別興味深いテーマだと常々思っているから。
難解だ難解だと書いてしまったが、このような科学解説書はもっと一般的に読まれるべきだ。その理由は二つ。
- 私たちを取り巻く世界はまだまだ理解できてはいないのだということを知ること。物理を真摯に解き明かしていこうとしている人たちが大勢いるのである。超能力や宇宙人や空飛ぶ円盤など、馬鹿げたことに付き合っている暇はないし、カルトに流れる余裕はないのである。
- 学校(高校まで)の数学、理科教育がなんとも昔の知識に留まっていることを認識できること。高校の理科の授業で教えていることは、せいぜい18世紀の理論です。早い話ニュートン力学の初歩。ゆとりゆとりといいながら、そのニュートン力学の初歩すら理解しようとしない子供がのだけれど。
日本は技術立国だそうで(すでに幻想になっていると思うが)、あきれるばかりなのだねえ。