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アンチエイジングが気になる?なら『ミトコンドリアのちから』 に注目!

      2017/09/16

ミトコンドリアのちから / 瀬名秀明、太田成男 / 新潮文庫
ミトコンドリアのちから (新潮文庫)

最初に恥ずかしい話をしちゃおう。本書を読んで以来、コエンザイムQ10のサプリメントを摂るようになった。実のところ、ぼくはサプリメントや薬が好きじゃない。できることなら服用したくないと思っている。にもかかわらず「コエンザイムQ10飲んじゃおうかな」と思わずにはいられなかった。なんでこうなったかについては後々簡単に述べるとして、自分の信条を変えてしまうほど本書は影響力があったということ。『ミトコンドリアのちから』のちからなのだ。

さて、これとかこれの影響で、最近妙に細胞づいている。ウイルスとくれば当然次はミトコンドリアだ(?)。よし、ミトコンドリアについて勉強してみよう、と捜して目に留まったのが本書。SFではないので念のため。ぼくも勘違いしかけたが、まじめな解説書である。

「はじめに」で著者が「ミトコンドリアのすべてがわかる、そんな欲張りな構成にする」と言っているのもうなずける。目次からわかるようにミトコンドリアについてのあれもこれもが網羅されていて、かつ読みやすく、初心者にはうってつけの入門書だった。

第1章 脂肪を燃やせ――メタボリックシンドロームの真実
第2章 酸素との闘い、科学の闘い――パストゥール、ワールブルク、クレブス
第3章 ミトコンドリアの構造とミトコンドリアDNA
第4章 危険なエネルギープラント――ミッチェル、ボイヤー&ウォーカー
第5章 活性酸素とミトコンドリア
第6章 老化とミトコンドリア
第7章 生と死を司るミトコンドリア
第8章 ミトコンドリアの病気に挑む
第9章 人類の起源と民族の大移動
第10章 ミトコンドリアと生命進化

直径1~1.5μm、長さ2~8μm、サイズは小さいが私たちの体の中に1京個(気が遠くなる)ほどもいる細胞小器官ミトコンドリア。これが様々な意味で絶大な役割を担っている。

生命の発電所

私たちが生きるのに必要なエネルギーは、解糖系、ピルビン酸酸化、クエン酸回路、電子伝達鎖という複雑な4種類のプロセスで生成されている(このへんはややこしいので、参考書『アメリカ版 大学生物学の教科書 第1巻 細胞生物学』を手元に置いて読み進めた)。エネルギー生産量は解糖系を1とすると、その他は合わせて16にもなる。そしてピルビン酸酸化、クエン酸回路、電子伝達鎖にミトコンドリアが関与している。要するにミトコンドリアの働きのおかげで16倍ものエネルギーを生産できているということ。すごいです。

ここでコエンザイムQ10は、ミトコンドリア内膜で電子伝達系のメッセンジャーをしている。ミトコンドリアが効率よくエネルギーを生産するためにはコエンザイムが欠かせないわけだ。ほら、コエンザイムQ10飲みたくなってきたでしょう?

活性酸素が問題だ

ミトコンドリアは酸素を利用して大量のエネルギーを生産している。もともと生物にとって毒ガスだった酸素を使えるようにしたことは画期的だったのだが、そこには代償もある。「活性酸素」を作り出してしまうことだ。活性酸素は老化促進、生活習慣病を招くとされているので厄介者という一面がある。大量のエネルギーを生産消費して生を謳歌するのと引き換えに、じわじわと身体を汚し、傷つけているわけだ。なんか環境問題とも重なるなあ。

ここでまたしてもコエンザイムQ10が顔を出す。コエンザイムQ10は活性酸素を無害化する抗酸化性物質として働く。コエンザイムQ10を摂取することは、身体中に分子レベルの浄水器や空気清浄機を設置するようなものだ(?)。ほら、もうコエンザイムQ10飲まずにいられなくなってきたでしょう。

生命進化を語る

視点変わって進化の話。
ミトコンドリアはDNAを持っていて、代々受け継がれている。DNAは世代とともに一定の割合で変異が起こるとすると、変位の頻度を調べることで進化の系統樹を描くことができる。さらに面白いことにこのミトコンドリアDNAは母系遺伝しかしないという特徴を持っている(男の(精子の)DNAは卵子にたどりつく前に傷だらけになってしまうので排除されるという悲しい運命をたどる)。だから母親だけをたどって先祖をさかのぼりやすい。こうして到達したのが人類の共通祖先「ミトコンドリア・イヴ」だ。ミトコンドリアはこんなところにも役立っている。

一方、ミトコンドリアは真核生物の誕生に関わっていると考えられている。16億年前、原核生物しかいなかったころ、古細菌の中にミトコンドリアの遠い祖先であるバクテリアが入り込んで共生するようになった結果、真核生物が誕生したという説だ。この出来事によって、今私たち生物は酸素を有効に活用し、より複雑な生物へ進化することができたらしい。

そんなことを学びつつ、今この瞬間も身体中でミトコンドリアがせっせとエネルギーを作り出してくれている様子と、彼らが演じた16億年前のドラマに思いを馳せつつ、コエンザイムQ10をポイッと口に放り込んでいるのである。

 - 自然科学・応用科学, 読書