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タレントがないならスキルを身に付ける 『レトリック感覚』

      2017/09/16

レトリック感覚 どんな分野でも、生まれながらの才能というのはあるはずで、自分に才能がないなあと認識すれば技能を身に付けなければならない(大抵の能力は後天的に備えられるものだとは思うが)。小説を書こうとした際、気の利いた言い回しをさそど苦も無く綴れる人もいるのかもしれないが、残念ながら小生はその類の能力はからっきしだめだから、技能としてこつこつ習得しなければならない。そんな思いで手に取ったのが『レトリック感覚/佐藤信夫/講談社学術文庫』だ。
本書はレトリックに関し、その生い立ちと日本への導入について説明した後、七つの手法を解説している。七つの手法とは、直喩、隠喩、換喩、提喩、誇張法、列叙法、緩叙法。
まず、レトリックの役割には、

  • 説得する表現の技術
  • 芸術的あるいは文学的表現の技術

の二つがある。小生の興味はもちろん二点目の“文学的表現の技術”にある。
次に、それぞれの手法については、具体的な例文を用いて解説されていてなかなかわかりやすい。例文は、漱石やら鴎外やら太宰やら、いわゆる文豪の作品から引かれていることが多いので、小生にとってはかなり畏れ多いのだが、さすがにうまいなあと感心させられる。これも著者の腕前だ。
さて、ふんふんと読み終えて、これで名文が綴れるかと言えば、世の中そんなに甘くないのは当然で、文章を書きながら身に付けていくしかあるまい。執筆の際、レトリックを意識する心構えができたことは一歩前進だ(と言いつつ、この記事のなんと平坦なことか)。

 - 人文, 読書