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手放してはいけないものがある 『ラッシュライフ』

      2017/09/16

ッシュライフ / 伊坂幸太郎 / 新潮文庫
ラッシュライフ (新潮文庫)
四つの(もしくは五つの)物語が交錯しながら進展する『ラッシュライフ/伊坂幸太郎/新潮文庫』は、正四面体のようなエンタテイメントだ。それぞれの物語(面)はそれだけでも充分味わいがあるのに、それらがちゃんと立体を形成していて3Dが浮かび上がってくる。
伊坂幸太郎のことだから、そのようなアクロバチックな構成は楽しみの要素の一つであって、エンディングに素敵な爽快感を用意してくれている。具体的に書き出しておこう。終盤で、ある人がある人に放った言葉。誰と誰とのことなのかはネタばれになるといけないから書かない。たどり着いたときのお楽しみ。

これは手放してはいけない気がするんです。譲ってはいけないもの。そういうものってありますよね?

あまりにも陳腐でストレートだが心に沁みた。ここに至るまでの物語にどっぷりはまり込んでいるからだろう。
本書の中の構成だけでも美しいのに、さらには『オーデュポン』『チルドレン』にもリンクが張られている。著者のホスピタリティの表れだと勝手に理解している。
これで小生の伊坂幸太郎体験は6冊となった。一向に飽きる気配はない。

 - 小説, 読書