固唾をのんで見守るしかない『天冥の標6 宿怨 PART2』
2017/09/16
天冥の標6 宿怨 PART2 / 小川一水 / ハヤカワ文庫JA
よくもまあ毎度々々度肝を抜かしてくれるよ。
PART1から3年後、2502年、太陽系はどエライ時代に突入してしまった。宇宙戦争勃発なのである。ロイズ非分極保険社団によって保たれていた均衡が破壊されようとしている。500年の宿怨の大爆発。そして混沌。宇宙戦争の描写の迫力と妙に納得させられるリアリティ、興奮の連続。
ここから300年後に『メニー・メニー・シープ』の時代が訪れるのである(まだ300年分の物語が隠されている!)。イサリはあのイサリとどうつながるのだろうか、植民地臨時総督がそろそろ現われてきてもいいんじゃないか、ドロテア・ワットもジニ号も気になる。今更ながらもう目を離す余裕などない。
そしてもう一つ。新たな太陽系外生命の物語が明確に語られる。その名は《穏健な者(カルミアン)》。「君たちにはこれまで黙っていたけど、実はこんな物語が隠れていたんだよ」とばかりに提示されるわけで、著者のドヤ顔が目に浮かぶのである。人類の肉体を借りた太陽系外生命どうしの戦いの様相をますます強めてきた。今後いかなる戦いを繰り広げていくのか。人類はどうなるのか。
圧倒されるがまま、支離滅裂なことを書きなぐってしまった。それほど頭の中が沸き立っているのだ。あれとこれとが結びつくのだよな、とか、あぁ昔の話を忘れてしまっているよ、とか。下手なミステリなんぞ寄せ付けないミステリの様相を呈している。読者にこれほど頭を掻き毟らせるとは、罪作りな小川一水なのである。
ところで『宿怨』はPART3で終わるのだろうな?まさかPART8とか言わないよな。それはそれで嬉しくもあるのだが。