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『天冥の標6 宿怨 PART3』にして呆然となる絶望

      2017/09/16

天冥の標 6 宿怨 PART3 / 小川一水 / ハヤカワ文庫JA
天冥の標 6 宿怨 PART3 (ハヤカワ文庫JA)

超弩級の物語世界に浸れる喜び。もうこれに尽きる。それも作者の書き下ろしを追って読み進める贅沢。3冊1000を越えるページを費やした第6巻宿怨、これまで散りばめられていた要素を一気に凝集した中間点が幕を下ろした。そして恐るべきことに、小川一水はここへ来て人類を、太陽系をどん底に叩き落とした。最終章のタイトルは、あろうことか「全太陽系応答なし」とは。

西暦2502年、異星人カルミアンの強大なテクノロジーにより、《救世群(プラクティス)》は全同胞の硬殻化を実施、ついに人類に対して宣戦を布告した。准将オガシ率いるブラス・ウォッチ艦隊の地球侵攻に対抗すべく、ロイズ側は太陽系艦隊(システムフリート)の派遣を決定。
激動の一途を辿る太陽系情勢は、恒星船ジニ号に乗り組むセレスの少年アイネイア、そして人類との共存を望む《救世群(プラクティス)》の少女イサリの運命をも、大きく変転させていくが―

大戦争、殺戮、死に至る病。繰り広げられるのは、まさしく「絶望」。しかしそんな中でも小川一水は光を忘れない。作品タイトル「天冥の標」を付与された第5章、ブレイド・ヴァンディとノルベール・シュタンドーレとのエピソードは、シリーズ全体の中でもひときわ輝いている。

第2巻と第1巻とを結ぶ壮大なドラマ。ぼくの頭の中で構築されているリンクはまだまだ不完全だし、全体像は頼りないくらいおぼろげだ。というのも、第1巻『メニー・メニー・シープ』を読み終えたのが2010年9月、すでに2年半が過ぎ、もう内容が頭に残ってないからね。完結したら時間に沿って読み直すつもり。その読書が楽しみだ。残された4巻、人類に希望の光はどう射し込むのか!

 - 小説, 読書