求めないやつに、何を言ってもむだだ 『サウスバウンド』
2017/09/16
遅まきながら奥田英朗初体験。ふらっと立ち寄った書店でこれでもかと平台一面に積まれていた『サウスバウンド/奥田英朗/角川文庫』を「まあ試しに読んでみっか」くらいの気持ちで手に取った。数日後、出張の移動中に読み進めたら止まらなくなった。飛行機の中で片付けようと目論んでいた仕事の準備なんてそっちのけである。あっという間に上巻読了。がまんできずに羽田で書店に駆け込み下巻を購入、途切れることなく読みふけった。まさに痛快一気読み小説。
本作は、前半が東京中野、後半が沖縄西表島を舞台として上原一家が繰り広げる、壮絶で勇気いっぱいの物語。組織に頼らず自立することを是とする元過激派の父に率いられる一家であるから、家族全員がとにかく強い、強すぎる。小6の長男二郎は中学生の恐喝に一歩も引かず、父一郎は国のいうことなど一切きかない。
特に後半の西表編に入っての圧倒的な開放感は心地よい。家族全員がよりパワフルになって、そのエネルギが伝わってくる。爽快、痛快である。
今年読んだエンタテイメントのベスト1候補。今まで奥田英朗に関心がなかったとは、とてももったいないことだった。
最後に。文庫を買われるときは、ちゃんと上下一緒に買いましょう。
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