だけど―ま、いっかもな。 『ボーイズ・ビー』
2017/09/16
桂望実の小説は「早春」だなあと感じた。季節感があるという意味ではない。寒々とした状況をスタートに、徐々に芽吹き、明るいエンディングで締めくくられる。このような物語のうつろいがなんとも早春的なのではないか。今回読んだ『ボーイズ・ビー/桂望実/幻冬舎文庫』と映画を観ただけの『県庁の星』から導いた大胆な感想だが。
さて、本作品は人との係わり合いを嫌う偏屈なジジイと母親を失って悩み苦しむガキとの交流の物語。ありがちなパターンの中で、最後まで読まずにいられなくさせる物語になっているのはすごい。特に、母親と死に別れ、自分自身の悲しみをこらえながら弟を支えようとする隼人の姿がよい。
小説はストーリーではない、人間の気持ちを書くものだということがよくわかる一冊だ。