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「好き」が伝わってくるミステリ書評 『ミステリ交差点』

      2017/09/16

ミステリ交差点いい書評集というのは、パラパラとページを捲っていてとても楽しい。著者が面白く読んだ本をたくさん紹介してくれているわけで、こちらも一気に大量の楽しみを味わえるから。たとえば、

  • 『地獄の読書録』/小林信彦
  • 『読まずに死ねるか』/内藤陳
  • 『ミステリ・ハンドブック』/早川書房編集部
  • 『冒険・スパイ小説ハンドブック』/早川書房編集部

などがこれまでにお世話になったそんな本たちだ。捲りすぎて今ではボロボロになっている。『地獄の読書録』なんて1980年刊だもんね(おー、カーター・ブラウン!)。

今回、それらの仲間に新たな一冊が加わった。それが本書、『ミステリ交差点/日下三蔵/本の雑誌社』である。ドドーンと136冊が取り上げられていて、さらにそれぞれの記事の中で言及されている作品は2000冊以上とのこと。およそ5年半書けて発表された書評の一挙大公開なのだ。

さて、「はじめに」で書評方針が述べられている。

おおよそ二ヶ月以内に刊行された新刊書籍の中から、何らかの共通点を持つ二冊を取り上げて紹介する、というコンセプトのコーナーだが、単にその二冊の内容をレビューするだけでは平面的な書評になってしまうと思い、「同じ共通点を持つ過去の作品」にもなるべく言及して、立体的な内容にするよう心がけてみた。

なんともすごい縛りである。なかでも「立体的」というところがよい。本来、記事はすべからくこうでなくては面白くない。私も立体的な記事を書けるようになろう。

肝心の書評はといえば、数もさることながら、ミステリに対する著者の愛情が伝わってきて、どうやら手放せない一冊になりそうだ。
ただ、困った点もあって、紹介されている本を無性に読みたくなってしまうことだ(そのための書評だろうが)。今回も何冊かまとめてAmazon買いしてしまった。いい書評本は、一冊買うとそれが何倍もの出費につながってしまうことが唯一の欠点だ。

 - 人文, 読書