すぐびん

読書や文房具のことについて書いてるブログです

検索

皆がしているから正しい、と思わないこと 『傷はぜったい消毒するな』

      2017/09/16

実に面白い。そして驚き唖然とした。『傷はぜったい消毒するな 生態系としての皮膚の科学』によれば「医学は科学ではない」のだそうだ。

話は擦傷、火傷などをどう治療すればよいのかというところから始まります。著者が提唱するのは「湿潤治療」。消毒などしない、水で洗うだけ。そして傷口をラップなど(本格的にはプラスモイスト、市販品ではキズパワーパッド)で覆い、じゅくじゅくの状態を保つ。常識なら消毒してガーゼを当てて乾かすわけで、その真逆をいく治療法です。これがすばらしい治療効果を発揮するらしい。常識に逆らうからといって、この湿潤治療がとんでもない発想なのではありません。むしろ皮膚の治癒過程の理屈に則った極めて真っ当な方法なのです。

湿潤治療を知ることができるだけでもためになる本なのですが、本書はそのレベルに留まるものではないところがすごい。著者はこの「湿潤治療」をもってして、常識は危ういこと、自分の頭で考えること、自分の手で試すこと、そしてその先にパラダイムシフトのあり方を力説したいのです。

湿潤治療は従来の(医学界の)常識に逆らっているので、相当厳しい抵抗にあうことが予想されるし、実際非難あるいは無視され続けてきました(最近ではようやく評価が変わりつつあるようですが)。医者といえばそれなりに知的レベルの高い人たちなのに(実は常識にとらわれるのは知的レベルによらない)、なぜ優れた新しい治療方法を受け入れられないのか。それは常識にとらわれているから。すなわち、常識は「思考停止」なのですね。

常識を疑う。鵜呑みにしない。パラダイムシフトとは、地動説や相対性理論、量子論、進化論など大それた事例を持ち出すまでもなく、身近にあることをこの本は教えてくれます。「怪我をしたら消毒する」というとても身近でちょっとしたことからして間違った常識である可能性が極めて高いのです。

そのためには、自分の頭で考えること、自分の手で試すことが必要となります。そんなことは当たり前と言われるかもしれません。しかし頭でわかっていても、実際に行なわなければ意味がない。実際に行動することが難しいのです。本書の中で著者は、自分で考え、観察・実験した結果、なぜ消毒が必要ない、いや消毒してはいけないのか、なぜ傷を乾かしてはいけないのかを説明してくれます。常識を疑うことの好例として。

さて読み終えて、著者の言うことが本当かどうか確かめてみています。脚に湿疹ができているので白色ワセリンを買ってきて、湿疹部に塗ってみました。あら不思議、次の日かなりきれいになったじゃないですか。シャンプーを使わないというのも試しています。ただ今実験中。幸いなことに未だ怪我をしていないので、肝心の湿潤治療は未実施ですが。

自分で考えるとはどういうことか、そしてそのことの大切さを教えてくれる好著。さらに医学界にけんかを売って主張を貫く快著。

傷はぜったい消毒するな 生態系としての皮膚の科学/夏井睦/光文社新書
傷はぜったい消毒するな 生態系としての皮膚の科学 (光文社新書)

 - 自然科学・応用科学, 読書