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アラフォーの探偵ごっこ 『日曜哲学クラブ』

      2017/09/16

『日曜哲学クラブ』を推理小説だと思って読むと痛い目に遭う。ここは一つアラフォーのおしゃべりと割り切った方がよい。読み終えてから気づいたのだが、腰巻きにもちゃんと書いてあった、「寄り道だらけの迷推理」と。

感想は4点にまとめられるかな。

その1。この物語で一番よかったのは<リアリー・テリブル・オーケストラ>のくだりだ。<リアリー・テリブル・オーケストラ>、訳すと<じつに下手なオーケストラ>、という市民オーケストラが登場するのだが、これがなんとも素敵なのだ。とても下手くそなオーケストラで、音ははずれ、拍子もばらばら。もちろんメンバーは真剣で、そんな演奏をコンサートを開いて聴かせるし、それに応えてちゃんと演奏会を聴きにくる人たちもいる。

「これはセラピーなのよ、彼らにとって」と別の一人が言った。「ごらんなさい。とてもうれしそうにしているでしょう?彼らはここでなければ決してオーケストラでなど演奏できる人たちじゃないのよ。これはグループセラピーというわけ。素晴しいわ」

こんなオーケストラ、うらやましい。私の息子はバイオリンを習っているので、入れさせたいくらい。自分のレベル精一杯で音楽を楽しむ姿勢に好感が持てる。解説によれば<リアリー・テリブル・オーケストラ>は実在し、著者のスミス自身その創設メンバーの一人なのだそうだ。

その2。ちょっと昔に流行った「品格」という言葉を思い起こさせる。主人公のイザベルは品格大好き。家政婦のグレースなんてもっとシビア。二人とも自分の好みに合わない人たちのことを認めないし、大嫌いなようだ。第一印象で人の善し悪しをスパッと決めるとこなんか恐ろしい。ある意味「ミステリの品格」ってタイトルでもよかったかもしれない。

その3。物語は男の墜落死から始まるのだが、警察はまったくと言っていいほど登場しない。不思議だ。エディンバラの警察は何をしているのかな。

最後にその4。最近の英国ミステリは性に合わないみたいだ。この前読んだ『白夜に惑う夏』と2冊併せての感想。意外性がない。もっと読者を驚かそうとがんばって欲しい。本書はスコットランドに興味がある方なら楽しめるのかもしれません。

本書は「本が好き!」を通じて東京創元社さんより献本いただきました。

日曜哲学クラブ/アレグザンダー・マコール・スミス(柳沢由美子訳)/創元推理文庫
日曜哲学クラブ (創元推理文庫)

 - 小説, 読書