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子のために父親は 『時限捜査』

      2017/09/16

もし、失った子供を取り戻せるのならば。『時限捜査』はそんな重たいテーマをベースにしながらもハラハラ、グイグイ読ませるエンタテイメント。本邦初登場ということでおそるおそる読み始めたが、なかなか面白い。

物語の内容をどこまで書いてよいのやら迷うので、ここは東京創元社の紹介文を拝借してしまおう。

幼い娘を失って以来、酒に依存する敏腕刑事カイル・ソマーズは、西海岸を震撼させる幼児連続殺人犯〈クレイドルラバー〉の特捜班班長に任命される。キャリア復活を賭けて捜査にあたるカイルは、子どもに関連する事件を調べるうちに、土壇場で被害者を救いだしていた〈青い肌の男〉の存在を知る。事件を予知したかのように現場に現われる謎の男と殺人犯、双方を追う捜査の行方は。
―東京創元社

捜査班内からの妨害に抗いながら事件を追うカイルは、事件関係者の妹・シェリーとともに幼児連続殺人犯を追いつめる。その一方で、常識を超えた仮説が〈青い肌の男〉の正体を導きだした。危険を冒してまで子どもたちの命を救っていた男の真の目的とは? やがてカイルは殺人者との対決を前に、一人の少女と多くの人命を秤にかけた、究極の選択を迫られる。大型新人が贈る感動作。
―東京創元社

私、父と子の物語にはとても弱い。単純に自分に投影でき、身につまされるからだ。本作においては、主人公の刑事カイル、青い肌の男、そして殺人犯クレイドルラバーまでもがわが子に関する無念を抱えている。決してお気楽に扱うことはできないテーマだが、エンタテイメントと割り切って読み進めた。「大型新人が贈る感動作」という宣伝文句もまんざらではなかった。キャラクターもよい。男も女もすごくかっこいいゾ!カイルの名台詞ベストはこれだ。

「助けが来るだろう」カイルは言った。
「どうしてそうとわかる?」とシンクレア。
「わたしが行くからさ」カイルは言った。

嵐が吹き荒れるような後半を通り過ぎ、ほんのりと心地よくさせてくれるラストがこれまたよい!あー、面白かった。

本書は「本が好き!」を通じて東京創元社さんより献本いただきました。

時限捜査上/ジェイムズ・F・デイヴィッド(公手 成幸 訳)/創元推理文庫
時限捜査上 (創元推理文庫)
時限捜査下/ジェイムズ・F・デイヴィッド(公手 成幸 訳)/創元推理文庫
時限捜査下 (創元推理文庫)

 - 小説, 読書