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『菜根譚』処世訓トーナメント

      2017/09/16

『菜根譚』という中国の古典がある。明代の人、洪自誠による、処世の心得などを説いた随筆集。生き方の書として根強い人気があるようだ。今時のタイトルなら、「人生を良く生きる222の方法」といったところだろうか。

試しに読み始めてみると、ズンとくる言葉もあるのだが、たいしたことない説教のような言葉もある。さらに、文脈なく羅列されているだけなのでいささか読みにくい。同じような文脈も繰り返し登場したりもする。単につらつら読むと、いささか退屈な書物なのだ(本来そんな読み方をしてはいけないのだろうけど)。

ここは一つ遊んでやろうと、トーナメントを開催してみた。収められている名言の中から、最も印象に残る一言を選ぶのだ。『菜根譚』には前集222条、後集135条が収められているが、まずは処世を扱った前集222条を対象にした。一対二、三対四、……、と対決し、2回戦、3回戦と繰り返し、最後に残るのがベストオブ菜根譚となる手はず。

今回は、岩波文庫の『菜根譚』を用いた。あまり深くは考えない。二つの言葉を比べて、心によりピンときたものを選んでいく。Don't think. Feel! なのだ。

面倒な選考経過をすっ飛ばして、いきなり優勝者を発表してしまおう。栄えある『菜根譚』ベスト処世訓はこれだ!

〈九四〉祖先の残された恩恵は何かと言えば、わが身が現在受けている恩恵がそれである。過去の長い年月にわたって積み重ねてきた祖先の苦労のほどを思うべきである。また、子孫の受ける幸福は何かと言えば、わが身が現在残そうとする幸福がそれである。将来の長い年月の間には傾き覆りやすいことを考えておくべきである。

ややもすると「恩を忘れちゃいかん」とか、「何事も忍耐が大事」とか、説教臭くて目の前の対処方法にとらわれた言葉が多い中、時間スケールが大きくとてもおおらかなところが勝因だったのだろう。

ちなみに惜しくも準優勝に甘んじたのは、

〈一五九〉人を信用する者は、人は必ずしも皆が皆、誠実であるとは限らないが、少なくとも自分だけは誠実であることになる。(これに反して)、人を疑う者は、人は必ずしも皆が皆、偽り欺くとは限らないが、少なくとも自分が先ず偽り欺くことになる。

だ。ありそでなさそな、肝に銘じたい名言だと思う。

時が経てば、また違った結果になるかもしれない。一度試してみてはいかが?

菜根譚/洪自誠/岩波文庫
菜根譚 (岩波文庫)

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