直感を使わなきゃ絶対損 『なぜ直感のほうが上手くいくのか?』
2017/09/16
なぜ直感のほうが上手くいくのか? - 「無意識の知性」が決めている / ゲルト ギーゲレンツァー(小松淳子 訳) / インターシフト
「本が好き!」さんから献本いただきました。ありがとうございます。
「直感」と言われると、どうもいい加減な判断のように聞こえるが、なんのなんの。論理的な解決法をはるかに凌ぐ優れた道具なのだ。『なぜ直感のほうが上手くいくのか?「無意識の知性」が決めている/ゲルト ギーゲレンツァー(小松淳子 訳)/インターシフト』は、直感とは何か、直感をどう使えばよいかについて、マックス・プランク人間発達研究所長の著者が懇切丁寧に解説してくれる一冊。とても刺激的、そしてこれまでの私の人生、ほとんど直感で生きてきたよなあと気づかせてくれる。
まず、私たちが普段意思決定する際、多くを直感に頼っている。買物、恋愛、育児、仕事選び、などなど。「直感なんかに頼っていない。よーく考えて決めた」とおっしゃる方、あるいはそんな方もいるかもしれないが、たいていの場合それは後付けの説明だ。恋人や結婚相手が今のその人なのはなぜ?ね、その人がいいと感じたからでしょう。それでいいんです。
意思決定の手段として、直感と対極にあるのが論理だ。この二つが勝負をすると直感のほうが正解を導き出す可能性が大きい。たとえばスポーツの試合の勝敗であったり、株価であったり。著名な解説者であろうと、優秀と言われているトレーダーであろうと、素人考えを超えることはないらしい。
もちろん直感も万能ではない。簡単な話、28335+58904の答えはちゃんと考えたほうが正解の確率は高い。では、どんなときに直感が有効なのだろうか。それは主に、
- 環境が不確実な場合
- 答のフィードバックがない、少ない場合
- 考慮すべき因子が膨大な場合
- 短時間で決定しなければならない場合
だ。上の二つは考えたって正解は得られないのだし、下の二つは答えが出るまでに時間切れになってしまうのだから。そして、人生で登場する意思決定は、その多くが上の場合にあてはまってしまう。
本書の話は以上のような個々の選択に留まらない。道徳、社会の在り方にまで発展する。直感は常に正しいとは限らない。ユダヤ人大虐殺は人の直感が引き起こした。身近な例だと、昨年の民主党の圧勝も直感によるものだろう。だから、直感をよく理解し、うまく使いこなしていくことが大事なのだ。
直感は進化した脳が持つとても大切な道具なのだ。不安定な未来に向かって進んでいかざるをえない今、いくら分析したって満足する答は得られない。適所適時に直感をうまく使う、それが正解なんだろうな。多くの人に読んでほしい一冊。