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どこが日本史上最も知的な雑談なのか 『人間の建設』

      2017/09/16

人間の建設 / 小林秀雄、岡潔 / 新潮文庫
人間の建設 (新潮文庫)

記事にしようかどうか迷ったんだけれど、エイッと書いちゃいます。今回取り上げるのは『人間の建設/小林秀雄、岡潔/新潮文庫』。ブログなどで他の人による紹介を見ると総じて評判が良いんですね。なるほど前半は感じ入りながら読み進めていったのですが、後半に入ると、裏切られたというか何というか。本を閉じたとき、僕にはどうしても馴染めないところが残りました。『春宵十話』のときも同じような感触でした。岡氏の思想にはついていけないんですね。それどころか拒否反応かな。

本書は、小林秀雄X岡潔というビッグネームどうしの対談を文庫化したもの。どちらかと言えば岡が自説を滔々と述べ、小林が聞き手にまわっている様子。

とにかく岡氏は「無明」「小我」というものをことごとく嫌っています。今の世の中をダメにしているのも(1965年当時の「今」ね)、このまま行けば今後ますます悪くなるのも「無明」「小我」が招いている、と言っています。

ここで、「無明」とは自己中心的な広い意味の行為をしようとする本能で、人間の醜悪にして恐るべき一面のこと。ピカソは無明の達人とされています。また「小我」とは自己中心的に考えた自己のこと。要するに、自分が自分がと自意識をあたりに振りまくことが世の中を悪くしている元凶だと。だから「無明」を捨てろ、「小我」にとらわれるな、と言いたいわけです。

まあそういうところも無きにしも非ずかなあ、とも感じますが、何の根拠も証明もないですよね。第一、前提として、世の中が悪くなっているのか?

後半になるとさらに雲行きが怪しくなります。岡の主張は日本礼賛、西洋否定へと突き進んでいく。

あなた、そんなに日本主義ですか。
純粋の日本人です。

神風特攻隊まで引合に出して、「小我」をすてることこそ日本人が大切にしなければならない精神だと言いだす始末。小林もうんうんとうなづいています。

裏表紙には、「示唆と普遍性に富む 日本史上最も知的な雑談」とあります。どこが?と言いたい。大御所の言葉だからといってすべてをありがたがる必要はないんじゃないかな。読み終わったとき、大沢と張本が「喝!」とか「あっぱれ!」とか叫んでいる風景と重なって見えました。

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