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最高の道具を探求する文献の旅 『ねじとねじ回し』

      2017/09/16

ねじとねじ回し この千年で最高の発明をめぐる物語 / ヴィトルト・リプチンスキ(春日井晶子 訳) / ハヤカワ文庫NF
ねじとねじ回し この千年で最高の発明をめぐる物語 (ハヤカワ文庫NF)

問題。先の千年紀(1001~2000年)に発明された最高の道具は何でしょうか?10年とか100とかのスパンだと、まだ対象は絞り易いけれど、1000年を見渡すとなると難しいですね。この難問に対して建築学の教授リプチンスキ先生が出した答えはこちら。

ニューヨークタイムズ紙から「ミレニアムの最高の道具についてエッセイを書け」との依頼を受けた著者は、工具箱の中を掻き回して最高の道具を選ぼうとするが、どうも決定打がない。そんな折、奥さんの一言で行き当たったのが「ねじ回し」だ。

そう言われると、なるほどねじとねじ回しは様々な物作りに大きな影響をおよぼしていると僕にも思われる。しかしリプチンスキ先生は「ねじ回し最高!」などと安易に決着を付けるようないい加減なお方ではない。さて、ねじ回しはその答えに本当に相応しいのか、「ねじとねじ回し」にまつわる文献の旅が始まる。

まず、ねじとねじ回しはいつ発明されたのか?これをはっきりさせないといけない。リプチンスキ先生は数々の古い文献にあたり、甲冑や火縄銃に目を配りながらねじとねじ回しのルーツを探る。調べれば調べるほど古い文献の中にねじとねじ回しが登場する。ついには1475年から1490年の間に書かれたとされる『中世の暮らし』という技術書にたどり着き、1480年頃にねじが使われるようになったのではないかと結論する。執念の調査だ。これでいつ発明されたのかが明らかになった。

そして次に、ねじとねじ回しは最高の道具なのか?リプチンスキ先生はねじとねじ回しの変遷についてもつぶさに調査を進める。16世紀半ば、ねじは様々な場面で使われるようになったが値が高かった。それから200年後、1760年にワイアット兄弟が木ねじ製造方法の特許を取得して以降、ねじは大量生産の時代に入る。それからはねじに加工するための機械、旋盤がラムスデンやモーズレーらによって次々改良され、ねじの精度が飛躍的に向上する。高精度のねじは高精度の機械を生みだし続けた。六分儀は世界中への航海を可能にし、望遠鏡や顕微鏡によってそれまで見ることができなかった世界が見えるようになった。科学の進歩はねじが支えてきたと言っても過言じゃない。現在、ねじなしで機械を作ることは考えられない。充分、最高の道具に相応しいではないか!

ねじとねじ回しの奥深さもさることながら、文献漁りの面白さも教えてくれる一冊。170ページほどなので読み易いですよ。

 - 自然科学・応用科学, 読書