長谷部誠の凛とした価値観 『心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣』
2017/09/16
心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣 / 長谷部誠 / 幻冬舎
ページをめくると、キリッと締まったサムライブルーの文字や写真が目に飛び込んできた。『心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣/長谷部誠/幻冬舎』は、サッカー日本代表MFでキャプテンを務める長谷部誠が自身の価値観を具体的につづった一冊。奇を衒ったことは一つも書いていない。真っ当すぎるかもしれない。だからこそ一言ひとことがスッと胸に染みこんでくる。
彼のキーワードは「心」。ただし心を強くするのではなく「整える」のだという。そのためには、心を鎮め、考える時間を持ち、整理整頓を心がけ、時間を大切にする。監督、先輩、若手との絆を深め優れた点を吸収する。感謝し、誠実さを大事にし、日本のサッカーのことを考える。プレーヤーとして、キャプテンとして、さらには未来の監督として自分を律して生きている姿勢がズンズンと伝わってきた。
本書に登場する長谷部のすごいところを一言でいうなら、自分を客観的に観察していることだ。自分自身のことを冷静に見つめ、考え、それを言葉に起こすのはそう簡単にできることじゃない。「56の習慣」それ自体よりも、長谷部のその能力こそ真似したいと思った。
さて、本書は以上のような自己啓発書の面を押し出しているが、サッカー読みものとしても愉しめる。Jリーグ優勝を目前でのがした横浜FC戦、ヴォルフスブルクでのポジションを獲得したシャルケ戦、アジアカップのシリア戦前のミーティングなど、とても面白かった。
ついでながら、本書を読んでいてフッと思い浮かんが本がある。『超一流じゃなくても成功できる/長谷川滋利』だ。別にハセハセつながりというわけじゃない。長谷部誠と長谷川滋利、二人の発想に重なりあう部分があるのだ。
『超一流じゃなくても…』の中で長谷川滋利は、
僕なりに消化したメンタル・トレーニングとは「最適」な気持ちの状態を作ることである。
と長谷部と似たニュアンスのことを言っている。
また、成功(何が「成功」なのかも詳しく述べられているが)するために有効な行動として、
- 書くこと―内省し、自分に嘘をつかないこと
- 悲観的に準備すること
- 常に種を蒔いておくこと
- 淡々としていること
- スポーツ選手としての責務を考えること
- 毎日の充実を図ること
を挙げている。本書の「56の習慣」との共通点が多い。
勝利をたぐり寄せる、一流になるための条件には普遍性がありそうだ。
本書は、本が好き!さんから献本いただきました。最後になりましたが素敵な本をありがとうございました。