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『古代アンデス文明展』@国立科学博物館を観てきたよ

      2018/01/12

フッ、と何十年も前の記憶がよみがえった。事の始まりはおそらく昔々に読んだ『パチャカマに落ちる陽』なのだと。『パチャカマに落ちる陽』は1974年刊の豊田有恒のSF短編集。この中で、インカ、アステカ、マヤの最後の様子――中南米に栄えたそれぞれの文明が、スペイン人の暴挙によって滅ぼされる様子――が描かれていたように思う。子供心に、文明が消え去るということに愕然とし、極悪非道にもかかわらずのうのうと現代まで続いているスペインに怒り狂い、歴史には本当に取り返しのつかないことがあるんだなと悲しくなったのを覚えている。『パチャカマ…』の強烈な読後感が、失われた文明というものに対して無責任なロマンをぼくが感じ続けてきたきっかけだったのだ。

突然なぜこんなことを思い出したかといえば、国立科学博物館で『古代アンデス文明展』が開催されているのを知り、無性に見たくなったから。自分はなんで「古代アンデス文明」に魅かれるのかを考えていたら、上のようなことを思い出したわけ。

ということで観てきた。

古代アンデス文明展入口

展覧会概要はオフィシャルサイトから抜粋。

南米大陸の太平洋岸に展開した、時間的にも空間的にもあまりに巨大で複雑な文明の全体像を、私たちはまだほとんど知りません。時間的には先史時代から16世紀にスペイン人がインカ帝国を滅ぼすまでの約15000年間、空間的には南北4000km、標高差4500mに及ぶ広大な地域で、ナスカ、モチェ、ティワナクなど多種多様な文化が盛衰を繰り返しました。
今回の「古代アンデス文明展」では、いくつもの文化が連なり、影響を与え合う中で育まれた神々の神話や儀礼、神殿やピラミッドをつくり上げる優れた技術、厳しくも多彩な自然環境に適応した独自の生活様式などを、約200点の選び抜かれた貴重な資料よって明らかにします。

この展覧会で知ったのだが、インカ帝国は、15000年の時間に支えられた、アンデス文明の最後の花火のようなものだったのだね。カラル、チャビン、ナスカ、モチェ、シカンなど多くの文化に礎のもとに(直接影響しているかどうかはさておいて)インカ帝国が誕生したのだ。

それらを一望できる豊富な展示は、当初の期待を上回るものだった。どれもこれも僕の目には奇妙に映る。13000年も前に日本を通り越して行った人々が発展させた文明だから、歴史の後ろを振り返ってもつながりがないわけで、だから「わかる」という感覚が湧かない。わからない。わからないけど、わからないからこそ面白い。たとえば鐙型注口土器とか。胴部から出ている二本のパイプが注口で一つにつながっている土器。液体を注ぐためになんでこんな作りにくい二股にしようと思い立ったのか不思議。

200もの展示品の中で、なんかよいね、と感じたものをいくつか挙げてみる。

土製のリャマ像

入口に飾られていた「土製のリャマ像」。ワリ文化(紀元650年頃~1000年頃) のもの。姿かたちも色彩も素直に美しい。

ネコ科動物の毛皮を模した儀式用ケープ

「ネコ科動物の毛皮を模した儀式用ケープ」、モチェ文化(紀元200年頃~750/800年頃)のもの。こんなの羽織ってる姿を想像するとかなり迫力あるよな。

木製の葬送行列のミニチュア模型

「木製の葬送行列のミニチュア模型」、チムー文化(紀元1100年頃~1470年頃)のもの。パッと見かわいいけど、よく見ると白い目が怖かったりする。

『パチャカマに落ちる陽』以来の憧れのようなものを目の当たりにできたわけで、興奮モノの展覧会だった。でも、観終えてやはり思ってしまうのは、インカが今も続いていればなということだ。タイムマシンを飛ばしてピサロを叩きのめばせればな、と。

13時頃入館、15時頃退館、およそ2時間の鑑賞。開催は2018年2月18日(日)まで。

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