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ライトノベルについて知りたかったこと 『ゲーム的リアリズムの誕生』

      2017/09/16

ゲーム的リアリズムの誕生-動物化するポストモダン2明確な目的を持って『ゲーム的リアリズムの誕生-動物化するポストモダン2/東浩紀/講談社新書』を読んだ。その目的とは“敵情視察”である。

小生は子ども向けの読み物を書きたいと思っているのだが、そのくせライトノベルには一切興味がない。ライトノベルが一部で隆盛を誇っているのを知ってはいる。ライトノベルとは一体何物なのか、何故違和感を感じるのか、一般的な児童書と何がどう違うのか、などなどすっきりしない疑問を抱えていた。上に“敵”と書いたのは“得体の知れないもの”という意味で、ライトノベルのことを知れば、自分の創作のヒントが得られるかもしれない。そんな折、まさにうってつけの本が目に留まったわけだ。

本書は『動物化するポストモダン』の続編にあたり、前書ではオタク文化全般を考察していたのに対し、本書はライトノベル、ゲームに的を絞った文芸批評となっている。
東氏の論を全て理解した自信はないが、小生の興味の対象であるライトノベルについて自分なりに解釈し、ポイントを抽出すると以下の4点となる。

  1. 現在、文学(小説)はリアリズムの観点から二つに分類できる。一つは近代から続く「自然主義リアリズム」であり、もう一つはポストモダンに新たに誕生した「まんが・アニメ的リアリズム」である。ライトノベルは「まんが・アニメ的リアリズム」を代表する文芸である。ちなみに、村上春樹も村上龍も当然「自然主義リアリズム」に属する。
  2. ライトノベルは、「キャラクターのデータベースを環境として書かれる小説」と定義することができる。「キャラクターのデータベース」とは、こういうキャラクターはこういう振舞いをするするはずだという共有認識で、そこでは外見的特長と性格、行動様式とが対応してパターン化されている。
  3. ライトノベルが支持されるのは、それがコミュニケーション効率がよいからである。「大きな物語」が衰退しつつある現在、現実を解してのコミュニケーションは困難になり、データベースを介してのコミュニケーションがその受け皿となっている。
  4. 今後、「自然主義リアリズム」は衰退し、「まんが・アニメ的リアリズム」は拡大する。

なるほど、ライトノベルトとは何ぞやがよくわかる。抱えていた疑問を解き明かしてくれた東氏に感謝である。小生の感じている(おそらく年配の多くも同様であろう)ライトノベルに対する違和感は、なんのことはない、小生がデータベースに接続していないことに起因するのである。

さて、「自然主義リアリズム」しか持ち合わせていない小生はこれからどうすればよいのか、それが小生の今後の課題である。データベースに接続する気は毛頭ないんだなあ。
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