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COURRiER Japon OCTOBER 2009

      2022/03/27

COURRiER Japon OCTOBER 2009ご縁あってレビュープラスさんより頂戴したCOURRiER Japon 10月号、面白く読ませていただいた。「世界の1500を超えるメディアの中から記事を選び、翻訳・編集しています」と謳っているだけあって、バラエティに富んだ世界各地からの記事が満載である。アメリカ偏重から一歩引いて、世界の平均値を知るのに打って付けの月刊誌だ。

10月号は『世界が見た“日本のCHANGE”』、『いま、なぜ「アフリカ」なのか』、『雑誌が「消える」日』の3大特集。

特集に関する短評は後述するとして、まずは特に興味深かった記事を二つ紹介。

一つ目はアフリカ特集から、『“チーター世代”がアフリカを変える!』(p49)。チーター世代とはアフリカに登場した国際感覚溢れるデジタル世代、政府の支援を待つのではなく自ら迅速に行動する若者たちのこと。彼らが新パン・アフリカ主義について語る一言が強烈に印象に残った。

(新パン・アフリカ主義の)哲学は“援助ではなく、貿易を”。起業家の芽を潰し、中産階級の台頭を妨げる援助なんか不要です。私たちは自分たちの失敗と成功に対して、自分たちで責任を負わなくてはいけません。

対等なビジネスをする用意がある、新しいアフリカのことだと思うよ。

施しの“援助”ではなく、対等の“ビジネス”を展開したいと熱望しているのだ。言われてみて気がついた。インフラ土建にじゃぶじゃぶ注いだ金は一部の特権階級に吸い込まれる。インフラが無駄とは言わないが、少数の権力者が潤うことは容易に予想される。金は末端まで流れない。それよりも始めから中産階級を育てる。彼らの“生産物”を買うことがアフリカの自立、社会経済の底上げにより効率的に違いない。
せっかくなので日本の対アフリカODA額を調べてみた(出典:外務省 国際協力 政府開発援助 ODAホームページ)。2007年は約1700億円、この額は南アフリカ以外ではそれなりの貿易額となるはずだ。

もう一つは『悪名高い過去の失策を繰り返す「看護士受け入れ」プロジェクト』(p34)。日本はEPAによる外国人看護士・介護士をインドネシア・フィリピンから受け入れようとしている。貴重な人材の確保となるはずのプロジェクトにもかかわらず、その内容があまりにも無謀なようだ。彼らは日本に来て研修を受けるのであるが、3~4年以内に日本語による資格試験に合格しないと即帰国となる。この試験が超難関らしい。特殊な医学用語が頻出する試験で、日本人でも読めないような漢字が溢れているという。1回目の試験合格者はゼロ。このような事態は人材が確保できないどころか、日本の損害になりかねない。

せっかく日本へ送り込んだ医療人材をつき返されるわけです。インドネシアの対日感情はまちがいなく悪化します。外交問題になってもおかしくありません。

形を取り繕うのではない、真剣な外国人受け入れに取り組む時に来ているようだ。

特集の印象を簡単に。
政権交代SPECIAL。今回の政権交代、おおまかには、韓中露は好意的、欧米は冷静といったところか。これが真実であればちょっと恐ろしい気もする。韓中露の歓迎ムードが単に自国にとって都合が好いということでなければよいのだが。
AFRICA:Land of Hope。普段意識に上りにくいアフリカに目を向けさせてくれる好特集。資源でも食料でも輸入に頼らざるを得ない我が国としては、世界全域から広く満遍なく取り込むことがリスクをミニマム化する鍵だと思う。
活字メディアの未来。雑誌が生き残るためのキーワードは、陳腐ではあるがブランドとアイデンティティ。

はじめて読んだCOURRiER Japon、私にとっては新鮮な情報と落ち着いた紙面に満足した。ただ最後に一言だけ苦言を。この表紙はいただけない。これではアフリカ特集ではなく、勝間特集じゃないですか。

(本誌はレビュープラスさんより献本いただきました)

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