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疾走する青春物語 『ナゼアライブ』

      2017/09/16

著者様より献本いただきました。ありがとうございます。

帯の惹句「10億人が…自殺する!?」を見て、清涼院流水のデビュー作『コズミック』が思い浮かんだのだが、これは完全に的外れな予想。『ナゼアライブ/川口愉快/文芸社』は、風変わりな少年(言い換えれば天才だ)・日那多雄が小学5年生から21歳までの様々な体験と対話を通して「生きるとは何か」を問う物語だった。
短めのエピソードが連鎖して、方や大きな謎(「10億人が…自殺する!?」ってやつね)、方や重たいテーマ(こちらは「生きるとは何か」)に収斂されていく様は、なかなかうまい構成だなあと感心。そしてスピーディーな展開に疾走感がある。だから、「どう決着させるんや」とやきもきしながら、クイックイッと読み進めることができた。

本作品は、ネットワーク上の仮想世界を提示したSFであり、誰がどうして何のためにを解くミステリであり、生きる目的を問う人生論であり、と多彩な物語りだ。そしてもう一つ、あまり小難しく考えることなく、青春小説として読むのもありだと思う。僕はそうのように読んだ。
というのも、描かれていることはかなり内省的であるにもかかわらず、主人公や彼を取り巻く友人たちがめっぽう明るいので、物語が暗くならない。彼らの言動がとても微笑ましく、楽しくさせてくれるのだ。でもこれっておじさんの読み方かもね。

ネタバレを気にして中身にはあまり触れられないのだけれど、「生きるとは何か」のキーワードの一つは「共感」だ。この答えには、なるほどそれもありかな、と思わせられる。

付け加えて、作者のユニークな持論も一興かと。

人間の思考とは、鼻水である。
外部からの侵入を拒絶し排除するためのストッパーであり、空腹時に気をまぎらわせるおやつでもある。

『自我量子仮説』
・アイデンティティは、波のように形がない。
・誰かと関わった瞬間に、都合に合わせて人格が確定する。
・そしてそれは、不連続に変化する。

なるほどなるほど。

とやかく言いましたが、たっぷり楽しませてもらえました。その上であえて一点。愛に語らせる最後の一言にもう一捻りあれば、さらにインパクトあっただろうなと思うのです。

ナゼアライブ/川口愉快/文芸社
ナゼアライブ

 - 小説, 読書