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頭を病んだエリートたちを炙り出せ 『特捜部Q キジ殺し』

      2017/09/16

特捜部Q ―キジ殺し―― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1853)キューブリックにより映画化された『時計じかけのオレンジ』は、公開当時、暴力を誘発する作品であると痛烈な批判を受けた。

デンマーク発の警察ミステリ「特捜部Q」シリーズ、前作『檻の中の女』に続く第2弾『特捜部Q キジ殺し/ユッシ・エーズラ・オールスン(吉田薫、福原美穂子 訳)/ハヤカワ・ミステリ』で、オールスンはそんな『時計じかけのオレンジ』をモチーフとした。

過去の未解決事件を掘り起こすコペンハーゲン警察の新部署「特捜部Q」。警部補カール・マークと助手のアサドが今回挑むのは、20年前に起こった無残な兄妹殺害事件。狙うターゲットは、人や動物をいたぶることに快楽を覚える、反吐が出るほど嫌なヤツら。寄宿学校の生徒だった頃、彼らは『時計じかけのオレンジ』のビデオ繰り返し目に焼き付け、蛮行を重ねる。大人になった今、金と権力を乱用し、快楽をむさぼり続ける。そして、徒党の一味だったにもかかわらず、彼らへの復讐を誓う女キミー。

こんな陰惨な話ばかり読まされたら辟易するところだが、そこのところオールスンは巧みだ。カール、アサド、そして新たに加わったローセたちは微笑ましいキャラクタ(彼らはなんと優秀な仕事人なことか)に作られているし、カールvsハーディ、モーナ、アサドの謎といったシリーズを引っ張るサイドストーリーもいい塩梅に挿入され、一息付けるといった具合だ。キャラクタといえば、幾度も災難に見舞われるカールは、いじられキャラとして定着してきたようだ。おじさん読者のぼくとしては寂しくもあり、反面、俄然応援したくなってきた。

常軌を逸した事件を舞台に、カール、キミー、ディトリウら三つの視点から描かれるストーリーはテンポよし。物語が進むにつれてボルテージが上がっていき、三つの視点が一つに交わるとき最高潮を迎える。そして結末は、いい意味で予想を裏切ってくれた。ぼくとしてはこの決着に大満足なのである。

前作に劣らぬ面白さ。次作も楽しみ。ほんとついでながら、マークって髪が薄かったんだね。

 

特捜部Q ―キジ殺し―― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1853)
ユッシ・エーズラ・オールスン
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