不完全性定理が腑に落ちる好著 『不完全性定理とはなにか』
2017/09/16
知りたい、気になって仕方がない、けどようわからん、とモヤモヤさせられるものありませんか?ぼくにはたくさんある。量子論やその先のひも理論であったり、セントラルドグマであったり、いっぱいある。そんな代表格の一つが「不完全性定理」。数学界に大衝撃を与えたスゴい定理。にもかかわらず、そのスゴさがわからない。なのもで、このタイトルを目にして反射的に手に取ってしまっていた。以前、野崎本『不完全性定理』に挑戦したが、そのときは消化不良に終わった。今回こそは何とか尻尾だけでもつかみたいところ。
先に結果をバラしてしまうと、何度も繰り返しページをめくっているうちに、ストンと腑に落ちる瞬間が訪れた。冒頭、フリーズの話から始まって、何を言いたいんだと思っていたら、読み終わったときには不完全性定理ってフリーズのことなのだとわかるようになっている。うれしいったらありゃしない。竹内先生のおかげです。好著!
まず、ゲーデルの不完全性定理とは、
- 自然数論を含む帰納的に記述できる公理系が、ω無矛盾であれば、証明も反証もできない命題が存在する。
- 自然数論を含む帰納的に記述できる公理系が、無矛盾であれば、自身の無矛盾性を証明できない。
の二つ。
はたして何を言わんとしているのか。これを見て、「数学って不完全なのか。なんだたいしたことないね。勉強する価値なし」などと思ったら大間違い。正反対。そこんところをちゃんと理解するために、本書では集合論、無限、対角線論法、論理学超入門、ゲーデル数といくつものハードルを乗り越え、不完全性定理まで導いてくれるのです。不完全性定理と関連して、チューリングの停止問題まで扱ってくれているので、そちらも同時にストンときた。
自分なりに平たく解釈すればこういうことだ。
まったく矛盾のない完全無欠の人がいたとして、その人に質問を投げかけたとする。ほとんどの質問には完璧な答えを反してくるのだが、なにかのはずみでフリーズしてしまうことがある。そのはずみは「自己言及」。厳密な人は厳密さゆえに自分のことを考え出すと言葉を発することができなくなるのだ。
対偶で考えるのもわかりやすい。1.の対偶は、すべての命題を証明(もしくは反証明)できれば、その公理系は矛盾である。何を問いかけても適当に答えてその場をしのげるやつはいい加減な人間だ、となる。ベラベラとあらゆる質問に答える人は矛盾だらけの信じられないやつなわけ。例えば政治家たちを見よ!
以上、ゲーデルが「何を」証明したのかについては消化できたつもり。しかし、「どうやって」証明したのかについてはまだ飲み込めていない。それには論理学なり超数学なりを真剣に勉強する必要がありそうだから、フツーの人としては、まずはこの辺で一旦良しとしよう。
この本がイイって証拠を最後にもう一つ。本書を読み終え、続いて巻末の推薦図書の筆頭に挙げられている『ゲーデルは何を証明したか』に挑戦しているのだが、これがスラスラ読める。やはり好著だってことを改めて実感している。