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『若冲展』鑑賞メモ〜こんなふうに楽しんだ

      2016/09/22

美術展に足を運ぶことがこれほどの非日常を体験させてくれるとは。遅まきながら実感した。一つひとつの作品、もちろん実物、を目の当たりにすることはそれだけでも充分感慨深いのだけれど、それらが展示されている空間に身を置くことがさらに貴重だったのだ。

5月6日、東京都美術館で開催中の『生誕300年記念 若冲展』をようやく観ることができた。美術館に到着したのが、開館から少し出遅れた9:45。すでに長い行列ができていて、入室できたのは11:30頃。待ち時間110分!待ち遠しかったし(この1月からやりたいことリストに挙げていた)、覚悟はしていたのでさほど苦にはならなかったけどね。さらに観終えて、その価値は充分あったと思う(それでも2時間弱は長かった)。

やっとこさ入室!

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なんとしても観ておきたかった今回の展覧会はこんな概要だ。 <公式サイトよりリンク>

伊藤若冲(1716-1800)は、18世紀の京都で活躍したことで知られる画家です。繊細な描写技法によって動植物を美しく鮮やかに描く一方、即興的な筆遣いとユーモラスな表現による水墨画を数多く手掛けるなど、85歳で没するまで精力的に制作を続けました。本展では、若冲の生誕300年を記念して初期から晩年までの代表作約80点を紹介します。若冲が京都・相国寺に寄進した「釈迦三尊像」3幅と「動植綵絵」30幅が東京で一堂に会すのは初めてです。近年多くの人に愛され、日本美術の中でもきら星のごとく輝きを増す若冲の生涯と画業に迫ります。

実は、この『若冲展』に先駆けて、正月にウォーミングアップをしていた。山種美術館での『ゆかいな若冲・めでたい大観』だ。こちらも楽しかった。で、いよいよの大一番、前回がオードブルなら今回はメインディッシュなのである。

入室すると、こっちを見てもあっちを見ても若冲(あたりまえや)。3フロアを使っての贅沢な展示。若冲の画を浴びるようだ。どれもこれもその前に立ち止まるとフームフームと鼻息が出る。その中でも圧巻はやはり「釈迦三尊像」と「動植綵絵」。1Fワンフロアに全33幅が広げられている。正面に釈迦三尊像3幅、それを動植綵絵30幅が取り囲む。足を踏み入れると異様な雰囲気を感じる。荘厳とでもいうのだろうか。釈迦三尊像を始めに動植綵絵を一つずつ観て歩く。1幅々々の隅々まで緻密だ。花鳥がメインで、優美な鳳凰(「老松白鳳図」)がある一方、地味な魚も虫もある。「地辺群虫図」では、こんな小さな虫(トビケラ?)まで描かれている。

老松白鳳図

老松白鳳図

地辺群虫図

地辺群虫図

執念だよな。そう、執念なのだ。若冲は仏様と関わっている生き物たちをこれでもかと丹念に描きこんだのだ。

一周観終わって、あらためてフロアの中ほどに立つとボーっとしてしまった。仏様を囲む空間に放り込まれたような感覚。恍惚といってよいかもしれない。ここにきてようやく気付いたのだが、空間自体が若冲の作品世界だったのだ。若冲は生々しくも理想的な生きものを配することで、仏様が見守る空間、仏様を囲む世界を創りあげたかったのではないか。

この感覚は画集では味わえまい。釈迦三尊像と動植綵絵とは、普段はそれぞれ別の場所に所蔵されているので、一望できるのはこのような展覧会しかない。贅沢の極みなのだ。

これら以外の作品も、それぞれが際立っていて、もちろん楽しめる。ぼくはこっそり「虎図」が好きだったりする。愛嬌のある虎。毛の1本1本が細かく全身に書き込まれていて、全体として立体感、飛び出してきそうな実態感を出している。彩色画とは変わって水墨画も捨てがたい。動植綵絵が歌舞伎なら水墨画は落語といったところ。

美術館を出たのが13:30頃。約2時間堪能した。もっと長居したい気持ちもあったけれど、さすがにへとへとだった。画に圧倒されて疲れちゃったのと、混雑のせいも加わって。いつものお決まりとして図録を手に入れて帰途についた。あー満足。

パンフレットをノートに貼り付けて、イベント完了。

jakuchu note

なお今回、前日に公式サイトでオンラインチケット(スマホ用)を購入した。チケット購入にも長い行列ができているので、待ち時間短縮に少しでも役に立つ。ちゃんとチケットの半券をもらえるので、コレクションしている方ご安心を。開催期間は5月24日(火)まで。

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